パワーストーンの歴史は、はるか紀元前まで遡ると言われています。
どの時代にも”石”は存在しており、美しい輝きや個性的な模様、天然石とは思えない形などが多くの人々を魅了してきました。
ところで、この“パワーストーン”という言葉自体は和製英語で、ある種の不思議な力を持つ「石」のことを指す言葉として、近年になってから日本で親しまれるようになりました。
英語では、鉱物結晶を意味する”Crystal”や、宝石を意味する”Gemstone”という表現が使われています。
ここでは、そんな“石と文明の歴史”について学習していきます。
文明から見る「石」の存在
古代メソポタミア
メソポタミア文明といえば、紀元前4000年から3000年頃に、南メソポタミアのシュメール人が人類初となる「ウル・ウルク・ラガシュ」などの都市国家を築いたことで有名です。
彼らは、食物や家畜の所有者情報を残すために、コロコロ転がすことで文字を写す仕組みを持つ石膏などの石で作った「円筒印章」でサインをしたとされています。
ウルの都市国家には、高さ8mほどの城壁がめぐらされ、城壁内の中心部にあるジッグラトと呼ばれる階段状のピラミッド神殿では、収穫物や財宝を捧げ、国の繁栄と豊穣を祈っていました。
ほかにも、紀元前2500年頃の墓群があり、中にはラピス・ラズリ(Lapis lazuli)「瑠璃」、カーネリアン(Carnelian)、ゴールド(Gold)「金」などで作られた装飾品があり、私たちの表現でいうところの”パワーストーン”が用いられていたわけです。
パワーストーンはこの時からすでに、人類との特別な関係を築いていたのですね。
古代エジプト
紀元前3000年頃に始まり、紀元前30年頃までの約3000年間という長い期間にわたって、歴史が続いたとされる古代エジプト文明。
ファラオと呼ばれる王の支配下でピラミッドが建造され、中でも有名なのがギザの3大ピラミッドです。
当時、人の死後も来世が約束されていると信じた古代エジプト人は、遺体に防腐処理を施し、ミイラとして棺に納めるとき、副葬品としてラピズ・ラズリ(Lapis lazuli)「瑠璃」、ベリル(Beryl)「緑柱石」、アンバー(Amber)「琥珀」、タイガー・アイ(Tiger’s eye)「虎目石」、ターコイズ(Turquoise)「トルコ石」など、古代エジプト時代には、数多くの石でつくられた装飾品や護符などが発掘されています。
ほかにも、武器や家庭用品などにも使用されたり、それらの交換・売買を行い、金銭的な価値も生み出していたとされています。
古代ギリシャ
古代ギリシャの人々は山、洞窟、樹木、泉など、自然への信仰心が強く、石に対しても特別な思いを持っていたとされており、アクアマリン(Aquamarine)、アメジスト(Amethyst)、エメラルド(Emerald)、トパーズ(Topaz)、サファイア(Sapphire)などが好まれていました。
そうした自然物への崇拝心はますます広がり、紀元前11世紀以降、ギリシャ半島に移住するアーリア人のあいだで、神々や架空の動物などを登場させた書物がつくられ、それらの本の中には、オニキスや珊瑚などが登場するものもありました。
こうした自然物に対する始原や意義を知ろうとする思いが、古代ギリシャの自然哲学者たちを育て、やがて本格的な哲学者として今日あるアリストテレスの時代へと移り変わりをみせます。
ギリシャ哲学を集大成した賢人のアリストテレスが著したとされる鉱物書には、700類もの鉱物が紹介されています。